落石編
この旅の探鳥におけるメインイベントの一つ、念願の落石ネイチャークルーズに行ってきました。私たちにとってこのツアーに参加する一番の目的は「エトピリカ」の観察です。次いで、チシマウガラスやコアホウドリ、ケイマフリとなりますが、果たして観察することができるのか? 濃霧で遠くの視界が遮られるなか、一発勝負のバードウォッチングツアーがスタートです。

船が出航して間もなく、ガイドさんより港内に珍しい鳥がいるとの案内がありました。コシジロウミツバメだそうです。クロコシジロウミツバメとの識別ポイントは、腰の白色部がU字型かV字型のようですが、飛行中でないと分かりません。褐色を帯びた体から少し見える白色部がアクセントになってますね。

沖に出ると霧が濃くなってきて、「これは何も見れそうもないかなぁ…」となかば諦めモードに突入していると、ウトウが現れてくれました。この後、帰還するまでの間、何度も見れることになりますが、いかんせん直ぐに潜ってしまうのでゆっくり観察することができません。




次に観察できたのは、ケイマフリです。アイヌ語の「ケマ(岩)」+「フリ(鳥)」が由来で「岩の鳥」という意味になります。鮮やかな赤い足と真っ黒なボディのコントラストが美しく、そして夏羽の特徴である、目の周りのリング状の白斑がとても愛らしいです。また、水面から飛び立つ際に足をばたばた蹴る姿がなんとも言えず、水しぶきが一直線に並ぶように残る様子が印象的です。



ユルリ島に到着し、穏やかで小さな湾内に入っていくと、沢山のラッコたちがお出迎えしてくれました。白い頭をした可愛い赤ちゃんももいて、とても癒されました。また、ゼニガタアザラシも陸に上がってのんびりしていました。


次のポイントに向かう途中、ガイドさんが大興奮で叫び始めました。そうです、ついにエトピリカが現れました。このツアーでも2週間振りに見れたそうで、「誰か強運の持ち主がいますね!!」と仰っていました。ツアー参加者一同、同じく興奮Maxでエトピリカに釘付けとなりました。あとで聞いて分かったのですが、連日ツアーに申し込みをして、「3日あれば1日くらいあたるかも?」的に来ている人が複数いたようです。私たちは、たった1日で見れたわけですから、本当にラッキーでした。
アイヌ語で、エト(くちばし) +ピリカ(美しい)が由来で「くちばしの美しい鳥」という意味になります。太くて大きなオレンジ色のくちばしは、夏羽(生殖羽)で特に鮮やかになるそうです。そして、顔の横から金色の飾り羽が伸びていて、とてもユニークな鳥です。この旅の探鳥における一番の目的を果たせて、嬉しさもひとしおでした。

突然の幸運に遭遇し時間も大分おしてしまいましたが、チシマウガラスが繁殖している島に向かっていただきました。波が高くなってきたので、島には近づけませんでしたが、十分な距離で観察できました。全体的に光沢のある黒色で、ヒメウに似た色彩ですが上面が紫色の弱い光沢で違いが分かります。また、目の周りから顔にかけて露出した赤い皮膚も、ヒメウと比べると広範囲です。そして、腰の両脇に白斑があるのも特徴となります。左側の巣では、ヒナが孵っており、右側の巣は抱卵中のようです。
この旅の探鳥におけるクライマックスに相応しい、充実したネイチャークルーズとなりました。どなたか定かではありませんが、強運の持ち主の方、エトピリカを見せていただきありがとうございました!!
(撮影日:2025年6月30日)