羅臼編
この旅の探鳥におけるもう一つのメインイベントである、羅臼に行ってきました。道東においてシマフクロウが見れる宿として有名な鷲の宿さんにてシマフクロウの観察を開始しました。
シマフクロウは極東地域に狭い分布域を持ち、日本では北海道に生息します。全長70cm、翼を広げると約180cmの世界最大級のフクロウです。河川および湖沼で魚類やカエルなどを捕食し、広葉樹の大木の樹洞に営巣します。
20世紀初頭までは、北海道全域に分布していたのですが、森林伐採による営巣木の減少と河川改修や砂防ダム建設等による餌の魚類の減少等により、現在は、北海道東部の知床、根室、十勝、日高、上川地域などで見られるだけになりました。北海道本島の生息数は約100つがい、200羽ほどで、絶滅のおそれが最も高い絶滅危惧IA類に指定されています。1980年代以降の行政や研究者、各保護団体、地域の方々による保護活動の努力が実り、近年では個体数は増加傾向にあるため、今後の道東から道央、道南、道北地域への分布拡大が期待されています。
引用:日本野鳥の会HPより
1970年代には50羽以下まで減少しましたが、懸命な保護活動によりわずかに回復しました。しかし、縄張りとなる適度な支流や大木の減少などによる生息地の減少で、これ以上増やすことも簡単なことではなく、絶滅の危機に瀕している状況に変わりはありません。そうした中、生け簀を設置しているとはいえ、野生のシマフクロウが見れるのは大変貴重な場所だと思います。

日が暮れたころ、音もなくやってきて木の枝にとまるメスのシマフクロウ。その圧倒的な存在感に釘付けとなりました。この瞬間、夜明けまでの長い観察タイムが幕を開けました。
お父さん



2016年生まれで左足に金色の足環をつけているオス(通称『NN』個体)です。 金色足環は道東地域の放鳥個体に装着するようで、本個体は2016年釧路管内で保護・リハビリ後、放鳥時に金色足環(NN)を装着。その後羅臼周辺に定着し、数年前から「鷲の宿」の給餌場所に現れるようになったそうです。現在は、9歳となるわけですが、無事に野生復帰してくれてよかったですね。
計6回飛来して、10匹食べ、6匹持ち帰りました。
お母さん



北海道で観察される足環のないシマフクロウは、生まれてから一度も保護・捕獲されていない完全な野生個体となります。よって、出生地・年齢・血統はわかりません。羅臼周辺では自然繁殖しているシマフクロウが複数いるようで、露からという話もありましたが、自然繁殖個体である可能性も高いです。
計5回飛来して、13匹食べ、6匹持ち帰りました。オスより大きいので、その分食欲旺盛なのでしょうか。
実は、スタートから数時間は、写真・動画にバンディング(黒い横線)が入り、どうしたらなくなるか悪戦苦闘していました。以下の動画は、昔のテレビ風に言えば「走査線が見えている」状態で見辛いですが、雰囲気は感じていただけるのではないかと思いアップします。
途中の仮眠も含めて計8時間超におよぶ観察が終わり、見れたことに安堵するとともに、次回は子連れの時期に来てみたいと思いました。
(撮影日:2025年7月1日)